肛門外科
いぼ痔 (痔核)
直腸下部や肛門周辺には血管が網の目のように張り巡らされた静脈叢(じょうみゃくそう)があります。特に直腸の内痔静脈叢(ないじじょうみゃくそう)は、肛門をぴったりと閉鎖するためのクッションのような役割を果たしています。
肛門に負担がかかる(排便時のいきみ、便秘、激しい下痢、重いものを持ったときなど)ことにより、血液循環が悪くなり、静脈叢がうっ血してクッションが大きくなったものを痔核といいます。できる場所により内痔核と外痔核にわけられます。
内痔核
肛門をぴったりと閉鎖するためのクッションの役割をしている内痔静脈叢(ないじじょうみゃくそう)に負担がかかり、血液の流れが滞る(うっ血する)ことによってこの静脈叢がこぶ状に膨らんだものを内痔核といいます。
内痔核ができる部位には知覚神経がないため通常痛みはありません。大量に出血する場合や、痔核が簡単に脱出したり(脱肛)、脱出した痔核がもどりにくくなると手術が必要になります。
脱肛を伴う内痔核
おもな症状
- 排便時の出血
- 肛門から脱出する(脱肛)
- 残便感
- 下着が汚れる
Goligher分類(脱出の程度による分類)
治療法
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1. 保存療法
肛門に負担をかけない生活習慣の改善と薬物療法(軟膏や座剤、内服薬)を行います。
排便を整えるために緩下剤や整腸剤などを使用することもあります。 -
2. 硬化療法(ジオン注射)
適応:主にGoligher Ⅱ~Ⅳ度の内痔核
痔核にALTA(硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸水溶液)を注射して、血流遮断により止血をさせ、無菌性の炎症をもたらし線維化することにより痔核を硬化・縮小させます。痔核を切らずに注射で治す方法で、日帰りで受けることが可能です。手術と違い創ができないため痛みもなく、術後の出血も心配もありません。非常に有用な治療法ですが、手術と比較すると再発率は高くなります(約10%前後)。図のように1つの痔核に対して4ヵ所に分割して注射する四段階注射法という方法で行います。一見簡単そうであり汎用されておりますが、きちんとした知識と十分な肛門診療や手術の経験がないと正確に打つことはできず、再発はもとより合併症をきたすことにもなります。
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3. ゴム輪結紮(けっさつ)療法
適応:主にGoligher Ⅱ~Ⅲ度の内痔核
痔核の根元にゴム輪をかけ、締めつることで痔核を壊死・脱落させます。1~2週間で痔核は取れます。痔核の大きさや硬さ、できた部位によっては処置できない場合があります。また、ゴムが外れた際に出血をきたしたすことがあります。 -
4.手術療法
適応:主にGoligher Ⅲ~Ⅳ度の内痔核、嵌頓痔核
痔核に流入する血管を結紮し、痔核を切除する手術。切除した後の創部は閉鎖せずに、オープンのままにして自然に治していきます。根治性は高いですが術後の痛みや出血のリスクは伴います。
外痔核
重いものを持ったり、スポーツをした時などに、肛門側の静脈叢(外痔静脈叢)から出血し、肛門周囲に血栓がつくられたものです。皮膚に近い知覚神経があるところにできるため痛みを伴うことが多くなります。
血栓性外痔核
治療法
軟膏や内服による保存療法が基本ですが。大きく、痛みが強いときには血栓摘出(外来で局所麻酔下に切除)を行います。